ライブRPGを用いたひきこもり支援

日本発達心理学会「関西地区シンポジウム」での発表。2016年11月12日(土)13:00~16:00、大阪国際大学。

ひきこもりと生きる社会――自立と支援を考える――

「 ひきこもり」とは,様々な要因の結果として,社会的参加を回避し,原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す。ひきこもり状態にある世帯は全国で約26万世帯,ひきこもり状態にある人は約69.6万人と推計され,社会的規模の問題となっている。

「ひきこもり」が発生する背景要因は多様である。従来の研究では主に,不登校,発達障害,家族との関係,コミュニケーション能力不足,対人関係や進路への不安など当事者と,広げてもその家族といった家庭内の閉じられた問題としての文脈で語られることが多いように思われる。

「ひきこもり」と一言で言っても,そのスタイルは多種多様である。ひきこもり状態にある人やその家族,周辺社会などにそれぞれ特有の経緯・課題があるため,一様な見方や支援方法では,「ひきこもり」を深く理解し,問題解決や社会適応へとつなげるうえで不十分だと考えられる。また,ひきこもり状態にある人は,10代から40代と年齢の幅も広いため,その理解には発達的視点を持つことも重要になってくる。個別,具体的な生を考えたとき,ますます多面的なアプローチや多方面からの支援が必要になるであろう。そこで本企画では,心理学,日本文化学,福祉,就労支援といった様々な分野の専門家,またかつての当事者をお招きし,発達的視点を織り交ぜ,多角的に「ひきこもり」をとらえることを目的としたシンポジウムの開催を提案する。このシンポジウムがひきこもり問題の解消や支援の一助となることを期待したい。

  • 開催日時:2016年11月12日(土)13:00~16:00
  • 開催場所:大阪国際大学6号館401教室(大阪府守口市藤田町6-21-57)
  • ポスター

発表:ライブRPGを用いたひきこもり支援:日本文化学とメディア研究の立場から

(社会的)「ひきこもり」は日本社会だけでなく、各国社会において深刻な問題となっている。特に日本では、良く知られている現象であるが、その理解に関しては、(メディア・一般人による)ステレオタイプなものにとどまっていると言える。また、海外では「ひきこもり」が日本人の「鎖国」性格の個人レベルの表現だという本質主義が見える。

当事者個人の支援でなく、「ひきこもり」が存在する環境への活動として、一般の人々が「ひきこもり」の生活世界を体験し、「ひきこもり」に関しての意識を高めるための方法の1つである、教育用のライブRPG/LARP(ライブ・アクション・ロールプレイ)を本発表で紹介する。LARP というのは、即興劇(インプロ)、共有ストーリーテリングとゲーム要素(ルール、障害物)の組み合わせにより、人々が自分と異なる世界を体験する方法である。教育LARPの方法論がサイコドラマもゲームデザインを引用し、「見せる」よりも「体験させる」という教育原理に基づいて行われる。